In to the moratorium

~農学院生のブログ~

リーマンショックを予測した金融トレーダーたち「マネーショート~華麗なる大逆転~」:映画の感想と評価

あらすじ

 2008年リーマンブラザーズの倒産によって起こった「リーマンショック」。その引金となったサブプライムローンの問題点を見抜いていた男たちが状況を逆手にとってお金儲けをする話。異なる立場の3組のトレーダーたちが立場や状況が違う中で、リーマンショックに対してどのように立ち向かっていったかが描かれています。

 


『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 アカデミー賞ノミネート予告(90秒)

 

金融の世界とリーマンショックについて楽しく学べる映画

 当時中学生だった僕でもしっかりと記憶に残っています。リーマンブラザーズという会社が倒産したことで世界的な金融危機に発展しましたが、そのきっかけにはずさんな管理のもと銀行や格付け会社によって取引されていたサブプライムローンがありました。この映画は当時のアメリカで起こった歴史的な金融危機の正体をその前段階の事件から紹介し、物語の中で分かりやすく説明してくれています。

またリーマンショックで儲けた人がどのような方法をとったのか、金融素人でもわかるように映画の中でユーモアを交えた説明をしてくれていました。

株取引についてのイメージとして成長する会社の株を買い、その会社が成長すれば株主に利益が入る。株取引とはそういうもので、不況で儲けることはできない。素人の僕はそう思っていました。しかし株取引には「空売り」と呼ばれる方法があり、それを使うと暴落する株によって儲けることができるそうです。

この映画では当時のアメリカ住宅ローンの危険性を見抜いていた3組の男たちが空売りを仕掛け、周りのトレーダーたちが大泣きする中自分たちだけが勝っていく様子を描いています。

 

自分たちは儲けるが、多くの人が職や生活を奪われる矛盾

 この映画、華麗なる大逆転というサブタイトルがついていますが内容は決して気持ちいいだけではありません。登場人物たちはリーマンショックで儲けを出しますが、それを防いだわけでも、周りに危機を知らせたわけでもありません。本人たちは儲けることができてめでたしですが、この事件によってアメリカでは多くの企業が倒産し、何百万人もの失業者が生まれます。この映画はそういった金融の闇につても繊細に描かれ、主人公たちは自分たちが儲けても素直に喜べない矛盾の中で苦しむことになります。

金融の世界の華やかさと残酷さをちょうどいいバランスで描いているため、実話を基にした話として非常に説得力がありました。

 

さいごに

 この映画に出てくるのはどれも金融業界の異端児たちです。金融業界に属していながら、決してその世界の常識に囚われなかったからこそ当時のおかしな状況に気づくことができました。最後に正しさが証明される気持ちよさと、そんな中でも多くの人が苦しさを抱えているという葛藤がこの映画の魅力だと思います。社会派の映画が好きだけど、劇映画として物語を楽しみたいという人にはおススメな映画でした。