In to the moratorium

~農学院生のブログ~

理系院生におススメ本、酒井聡樹著「植物のかたち」について

 私、現在M2で東北の某大学に在籍している。僕が大学院に進学した理由は真っ当なものから、そうでないものまで色々あるが、院に行く以上研究はそれなりに充実したものにしたいと思っていた。

そんな僕がG4の時に読んで少なからず影響を受けてしまった本がある。それが酒井聡樹著の「植物のかたち」という本だ。

 

植物のかたち―その適応的意義を探る (生態学ライブラリー)

植物のかたち―その適応的意義を探る (生態学ライブラリー)

 

 

この本、ゴリゴリの専門書で、植物生態学に関する研究が書かれている。これだけだと大半の人は自分に一切関係ないと思うだろうが、この本は世の理系で院を目指す人ならみんなに勧めたいほど良書だと思う。

まぁ、細かい理由はいろいろあって後に書いてくが、ます第一の理由が「面白いから」である。勘違いしないでほしいのが、専門家だけが読んで面白い”インタレスティング”ではなく、”ファン”という意味でもだ。初めて読んだ時はレポートの参考にしようと思い、タイトルだけで借りたのだが、タイトルと体裁から想像できない内容だったので最後まで苦労せず読み進めることができた。

 

こんな専門書なかなかないと思うのでその魅力について院生目線で紹介してみたい。

 

研究者を目指す若者のエッセイ

 内容はタイトルどうりカエデの枝の伸長様式について専門的な知識が書いてある。大体中身の半分がそんな感じで、残りは筆者の大学院時代の思い出をつづったエッセイになっている。このエッセイ部分が面白く、研究者を目指して未知の領域に取り組んだ駆け出しのころのエピソードが飾り気のない文章でつづられている。どのような内容の研究をどんな考え方で取り組んでいたのか、当時の状況と合わせて書かれているため、読むと研究って面白いんじゃないかと思えてくるのだ。

 

第4章が特に面白い

 

 筆者が修士論文の内容を元に英論を書いて、初めて受理されるまでがこの章で語られている。院生でも研究の世界の仕組みについて知らない人は意外と多く、自分がそうなのだが、構成員の少ない過疎研究室だと、先輩がいないため研究の全体像が分かってない場合も多い。この本は初めて論文を書いたときの苦労を当時の心境とともに書いてくれているので、楽しみながら論文について知ることができ、他にも修論、学会、ゼミ等、普段理系の学生の周りにある仕事をどのようにとらえればいいのか足りない部分を補完してくれる。

 

最後に

 

 文章の中身は一切気取ったところがなく、研究がそんなに高尚なものではないと教えてくれる。一方で一流の研究者がどのように考えて研究の世界に入ってきたのかを知ると自分との差がわかってそれはそれでためになったりもする。この先生は「これからレポート・卒論を書く若者のために」、「これからレポート・卒論を書く若者のために」など若者に目を向けた本を多く出しており、うちの学生部屋の共用スペースにも一冊おいてある。「植物のかたち」はそれらの実践編に入る前に読むといい一冊ではないかと思う。とりあえず社会に出る覚悟がなく院生になったが、今後どうしていいか迷っている人に違ったモチベーションを与えてくれるかもしれない。