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~農学院生のブログ~

人間同士の駆け引きをびっくりするぐらいよく描いたサスペンス映画 スーパー・チューズデー ~正義を売った日~:映画の感想と評価


スーパー・チューズデー ~正義を売った日~(字幕版)予告

 

 今回紹介するのはアメリカ映画のスーパーチューズデイです。監督はジョージクルーニー。キャストも同時に努めているので監督兼わき役という形になります。

 なんの予備知識もなく、蔦屋で物色していた時に手に取った映画なんですが、非常に自分好みでよくできた映画だと思ったので紹介したいと思います。

 

 

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ [DVD]

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あらすじ

 主人公はアメリカ大統領選民主党の候補者モリスの選挙対策事務所で働くエリート、

スティーブン。若干30歳ながら事務所のナンバー2の地位を任され、将来性もあり、頭脳明晰で部下からの信頼も厚いという限りなく完璧に近いような人物です。自分が担当する大統領のモリスが大統領選に勝てるよう敵である共和党候補者の敵情視察を行い勝負を決する舞台となるオハイオ州での投票に向けて大統領のイメージ戦略や演説対策など準備を進めていきます。

 そんな矢先インターンで事務所を訪れていた若い女性に食事に誘われ、そのまま一夜をともにすることになります。その後も何度か夜を過ごしたある日、真夜中すぎに彼女の電話に誰かから着信があります。当然男の存在を疑ったスティーブンは電話の主を確かめようと彼女が止めるのを振り切って電話に出るとその相手はなんと大統領候補のモリスだったのです。

 大統領のことを本当に立派な政治家として信頼していたスティーブンですが、その日を境に政治家の陰にあるドロドロとしたスキャンダルに身を投じ、自身もその中で徐々に汚れていく姿が描かれます。

 

最高に汚い、最高の頭脳戦

 自分の候補者を選挙に勝たせるための秀才たちの頭脳戦が綿密に描かれています。候補者のイメージを上げるためのテレビや演説の対策。票を獲得するための力のある政治家の取り込み、法の許すギリギリの手段で相手を蹴落とそうともします。それはもう敵も味方も関係なく持てる情報を駆使して頭脳戦が行われていきます。相手に抵抗の余地を与えない完璧な戦略の押収が、見ていてゾクッとするぐらい見事でした。

 

陽があれば陰がある。

 この映画主要な登場人物にいい人が一人も出てきません。主人公ですら政治の世界の汚さに触れていくにつれ徐々に正義を失っていきます。あらすじでも述べたように主人公はかなりできる人で自信過剰になっている部分はありますが、決して悪い人ではありません。上司に対する忠誠心もあるし、モリスのことも優れた政治家であり、優れた人格者として本気で大統領にしたいと思っています。しかし、自分がスキャンダルに巻き込まれ、キャリアが危機にさらされ、ある事件が起こったことで今まで大切にしてきたはずの正義まで失ってしまうのです。そんな主人公の葛藤にリアリティーを感じ、邪道な世界に落ちていく主人公に対して外野から悪い奴だとバッサリ切り捨てることはできなかったです。それも主人公の心理が移り変わっていく過程とその背景にあるものが丁寧に描かれていたからだと言えます。

 例えば、社会や人間関係のドロドロを描いた映画のよくあるパターンとして、清廉潔白な主人公がいて、そいつが悪い人たちにいじめられながらも正義を貫いて成長していくような構成の物語は映画に限らずたくさんあると思います。そういう話は見ていて気持ちいので僕も好きですが、現実を考えたとき最初から最後まで汚いものに手を染めずにやっていける人はそうそういないと思います。現実で自分のことを清廉潔白なドラマの主人公だと思っているような人はたいてい周りが見えていないだけです。

 この映画はそういった厳しさを現実に即した形で教えてくれる良作だと思います。映画に出てくるキャラクターひとりひとりの姿が汚い世界を生き抜いてきた人生経験を反映しています。そこらへんのビミョーな駆け引きがよくできている映画なのでぜひ見てみてください。

 

 

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