In to the moratorium

~農学院生のブログ~

ナイトクローラー

  • 近況報告

 

久しぶりの投稿ですが、私、今年度から大学院生となり早くも1っか月がたとうとしています。

研究室も同じ、過疎研究室で自分が年長者。後輩は数人だけ。

バイトも研究も授業も今のところ順調に進んでいるので、順調だからこそ代り映えのない生活の退屈さを感じています。

 

昨年度は後半戦、卒論やらプライベートのなんやらで、卒業するまでの数か月間精神的にも肉体的にも自分の限界を見たなーという感じだったので今の平和な時間は退屈ではあるんだけれど、悪くはないなとも感じています。

 

思えば、今までの人生特に立ち止まることなく多くの人がたどるのと同じレールに乗ってやってきました。浪人にもならず、学校にもなんとか行きつづけていたので。(笑)

そんななかで大学院に行くというのは同級生たちにおけるマジョリティーから初めて自分が外れるような感覚でなんとも説明しづらいですが、自分の道を歩まなきゃいけない一つ目の岐路のように感じています。

 

今日研究室に一足先に就職した友達が訪ねてきてくれました。

彼の職場は思いっきりエリートが集まるような場所なので仕事の大変さ、周りにできた人間関係のすごさに疲れているようです。当たり前ですよね。自分は新しいバイトを始めるだけでも自分をわかってもらって、居場所を作るのに苦労するのに、周りは仕事のできる大人ばかり、スーツに囲まれる圧力の中で精神すり減らさないわけがないと思います。

彼は社交的で、適応力がかなりあるタイプなので最初大変でもうまくやっていくでしょう。自分もそういったところに飛び込むことになるのでそれまでに精神的な覚悟だけは持てるようになりたいと思います。

 

前置きが長くなりました。ここからは映画についてです。

 

 

 

映画『ナイトクローラー』予告

 

2015年公開の映画です。主演はジェイクジレンホール。個人的な2015年のベストでめっちゃ面白かったので紹介します。

 

 

  • あらすじ

 

 ジェイクジレンホール演じるルイスは特に職にも就かず、ものを盗んでは売って生計を立てているようなこそ泥。しかし心の奥では自分の能力を信じ、いずれは社会的に成功してやろうと胸に高い志を秘めています。

ある日そんなルイスが目にしたのはテレビ局のニュース番組に独占映像を売るために夜の街で日々起こり続ける交通事故や殺人事件を追う人々。これこそ自分の天職だと確信したルイスは盗品を売った金でカメラと無線機をを用意し、ホームレス同然の若者を最低賃金以下の給料で雇い、衝撃的な映像をカメラに収めるため夜の街を飛び回ります。

そのなかでどんな残酷な手段を使ってもカメラに映像を収めようとするルイスの異常なまでの執念が描かれ、人間的な倫理観では確実にNOといえる人物が社会的に成功していく姿が描かれます。

 

 

 この映画の主人公はまさにサイコパスといえる人物です。

 

精神病質

精神病質(せいしんびょうしつ、: psychopathyサイコパシー)とは、反社会的人格の一種を意味する心理学用語であり、主に異常心理学生物学的精神医学などの分野で使われている。その精神病質者をサイコパス: psychopath)と呼ぶ。

特徴

犯罪心理学者のロバート・D・ヘアは以下のように定義している。

 wikiより

 

とにかく他人に対する共感性が乏しく、自分以外の人間を利用の対象としか考えていません。そのため自分の目的を達成するためなら常人がたやすくためらってしまう他人を傷つける行為も迷いなく行うことができます。

こういったサイコパス。映画の世界では昔からテーマとして描かれてきました。有名なのは「羊たちの沈黙」(1991)におけるハンニバル・レクター教授。キャラクターとして非常に有名で続編でスピンオスも作られています。目が怖いですね。映画はさらに怖いです。

f:id:ganseki2816:20160430193225p:plain

 

彼もそうなのですが、映画で描かれるサイコパスは猟奇的な殺人者であることが多かったと思われます。しかし本作の主人公ルイスは進んで殺人を犯すような人物ではありません。

 

法を犯すことにためらいはないんですが、そのことがばれないように巧妙に自分をカモフラージュしています。そしてそのことがこの映画の怖さや面白さの核になっています。

 

想像してみてください。普段人当たりもよく、社交的で多くの人からは明るいと思われているような人物がいったん人の目を離れ仕事になると倫理的にありえないようなことを平気でやるのです。

むしろ世間的に悪人だと認知されている殺人者のほうが、心の準備ができるぶん恐怖は少なくて済むんではないでしょうか。

 

こういった他人の気持ちを考えないような性格の人って意外と周りにいるような気がします。特に理系の研究者なんかには、、、、もちろん映画のレベルが桁違いですが。

 

そんなリアリティーも相まって強い嫌悪感と刺激的な面白さを両方感じることができて映画を見終わった後にハッピーエンドを見た時とはまた違った満足感を味わうことができました。

 

自分の狭い経験から社会で成功することと人としてブラックなことはある意味共通点があるのではないかと思っています。仕事のために人に支持を出し、人を使う立場に立てる人は他人の気持ちを無視しなければならない場面も多いだろうし、そこをためらっていると仕事で重要なスピード感が失われるからです。

 

成功は人生の価値の一つにしかすぎないと思うので、どっちが良くてどちらが悪いかなんて論点で話しても意味がないと思うのですが、きれいごとだけではなんともならない世の中で、いい人だけではいられないだろうなーとも個人的に感じました。

 

  • 綿密なクライムストーリー

 

 主人公の人物像以外にもこの映画にはたくさんの魅力があります。まずフリーランスのカメラマンという職業。なじみのない職業ですが、パパラッチのイメージに近いものがあります。いい映像が撮影できれば金になりますが、収穫がなければ収入なしのギャンブルな商売です。ルイスは持ち前の頭脳とリスクを恐れない思い切りの良さでニュース番組が求める刺激的な映像を次々ととり続けていきます。結果を残すのです。

やっていることは犯罪も多いので嫌悪感はありますが、それ以上に作戦の立て方とその実行力がすごい。完全に悪役として描かれているキャラクターですが、”悪人”として突き放せない魅力があります。

 この映画ではルイスの無慈悲な所業の犠牲者も出てきます。ルイスの異常性に気づきながらも利用される人々。不憫です。こういう主人公から逃れるためには距離をとって逃げるしかないと思います。攻略しようとするのは危険すぎる。

 

  • おわりに

 

ゾクゾクっとした感覚を味わいたいないならこれ以上ない映画だと思います。またしっかりエンターテイメントの範囲に収まっているので十分多くの人が楽しめる映画でもあると思います。ぜひ。

 

 

 

 

ganseki2816.hatenablog.com

ganseki2816.hatenablog.com