シュールだけど普通にええやん。”エターナルサンシャイン”:映画の評価と感想
先日、寒くなってきたこともあって、独り身の寂しさが増幅されたのか無性に恋愛映画が見たくなり、ツタヤでいい映画がないかと棚を物色していたところ今回紹介する「エターナルサンシャイン」が目に留まった。
この映画の脚本は「マルコヴィッチの穴」のチャーリーカウフマンが手掛けている。
チャーリーカウフマンという人は少し変わった脚本を書くことで有名で、マルコヴィッチの穴ではオフィスに突然現れた不思議なトンネルが実在の俳優ジョンマルコヴィッチの脳内につながっており、そこで彼を操ることで俳優のリッチな生活を自分のものにできるという一風変わった物語が話題を呼んだ。
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そんなチャーリーカウフマンが手掛けた恋愛映画ということでまぁ普通ではないんだろうなと思い、普段の大道ラブストーリーでは味わえない感覚を期待してDVDを手に取った。
期待どうり内容はやっぱり少し変わった感じだった。
まず、物語の主役となるカップル二人が普通じゃない。
30過ぎで暗くて冴えないうつ病一歩手前のような男ジョエルと青やオレンジなど奇抜な色に髪を染めるつかみどころのない押しつけがましい明るさを持った女性クレメンタインが主人公で、それぞれを「マスク」でおなじみのジムキャリーと「タイタニック」のヒロインを演じたケイトウィンスレットが演じている。
倦怠期で喧嘩ばかりしていた二人だったが、ついに別れようと決心し、クレメンタインの方が、二人の思い出を消し去りたいがために記憶消去サービスを使い先に自分とジョエルとの全ての記憶を消してしまう。
それに腹を立てたジョエルもクレメンタインとの記憶を消すために同じ記憶消去サービスで自分の思いでを消し去ろうとする。
何の前置きもなく「記憶消去」という言葉が出てきたが、ここらへんが、チャーリーカウフマンの脚本らしいところで普通のアメリカの街並み、現代の時代背景の中に記憶を消してくれるお店が当たり前のように登場する。他はどこにでもありそうな日常が描かれている分、余計面喰ってしまう部分があるのだ。そんなシュールさがこの人の脚本の面白いところでただのラブストーリーで終わらない意外性があった。
彼女に続いて2人の思い出を消そうとしたジョエルだったが、その記憶消去の作業中自分の頭の中で彼女との思い出が少しずつ消えていくのを感じながら、やっぱり彼女のことを忘れることが嫌になり、自分で頼んでおいた記憶消去に頭の中で対抗しようとする。二人の思い出が消えていく絶望とそれを望まない葛藤の中で物語は進んでいくのだ。
最初のこの映画を見始めたときは2人があまりにも奇抜なカップルだったために共感するのは難しいんじゃないだろうかと思ったが、話が進むにつれ、お互いのまっすぐな相手を思う気持が見えてきて、見ている側としても徐々に引き込まれていった。
そしてシュールな設定を設けているにも関わらず、物語の最後は大道に引けを取らないような、物語としてしっかりと腑に落ちる結末が用意されていて、ラブストーリーとしてしっかりと後味も良い内容だった。
かっこよくはないが飾り気のない二人の姿は見ていて押しつけがましくなく、憧れやうらやましさとはまた違った形で恋愛の良さを感じることができた。
この映画ではサブキャストもなかなか豪華で、イライジャウッドやキルスティンダンストが出ていて、過去に超大作で名をはせたような人たちがまた全然違った姿を見せていて個人的には面白かった。
エターナルサンシャイン。普通のラブストーリーには少し飽きてしまったという人はこの映画で少し違った風味を楽しんでみるのもよいかもしれない。